
看護師や薬剤師、介護職、保育士——医療・介護・保育の現場では、人材紹介会社を通じた採用が当たり前になりました。一方で、いざ紹介会社を選ぼうとすると「どこが実績豊富なのか」「手数料はどのくらいか」「紹介された人がすぐ辞めないか」といった肝心の情報は、各社のサイトを一つひとつ見て回らないと分からないのが実情です。
そこで、厚生労働省と関連団体が公表する公的な開示データを一枚に集約し、人材紹介会社を横断比較できる無料ダッシュボードを公開しました。本記事では、その使い方と、データから見えてきた示唆を紹介します。
このダッシュボードでできること
ベースにしているのは、次の2つの公的データです。
- JESRA適正認定(医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度。厚生労働省委託事業)——認定事業者と、職種別の前年度入職実績(採用規模)
- 厚生労働省「人材サービス総合サイト」——各事業所が開示する就職者数・手数料実績率・6ヶ月以内離職率
これらを突き合わせ、認定を受けた63社について、以下の軸で並べ替え・絞り込みができます。
- 実績:就職者数(年度推移)と、職種別の採用規模
- コスト:職種別の手数料実績率
- 定着:6ヶ月以内離職率、無期雇用率
- その他:返戻金制度の有無、対応エリア、サービスブランド
職種をプルダウンで選べば、その職種の採用規模が大きい会社順に並び、平均手数料率も表示されます。「薬剤師を探している」「自院のエリアに対応している会社に絞りたい」といった現場の探し方にそのまま沿う設計です。
データから見えてきた3つの示唆
1. 手数料率は職種で大きく違う
同じ「紹介手数料」でも、職種によって実績率の水準ははっきり分かれます。開示各社の平均を職種別に見ると、次のような序列でした。
- 薬剤師:約 27.1%
- 保育士:約 26.1%
- 保健師・助産師:約 24.2%
- リハビリテーション専門職:約 23.5%
- 看護職:約 22.7%
- 介護職:約 21.4%
- 医師:約 20.6%
薬剤師・保育士がやや高め、医師・介護職が相対的に低めという傾向です。薬剤師や保育士は採用競争が激しく希少性が高い一方、医師は紹介手数料の「率」では抑えめ——といった採用市場の力学が、開示数値からもうかがえます。職種ごとに数ポイント単位で差が出るため、採用計画では「どの職種を・どの会社経由で」を意識するだけでコスト構造が変わってきます。
2. 「定着」と「返戻金」はほぼ標準
無期雇用での就職者の6ヶ月以内離職率は、中央値で約 11.6%。無期雇用率の中央値は約 88% と、多くの会社が長期雇用前提の紹介を行っていることが分かります。また、早期離職時の返戻金制度は63社中62社(98%)が「あり」。令和6年度の認定からは「就職後6ヶ月以内の離職」が返戻金の条件として整理されており、ほぼ業界標準になっています。
ランキングでみる主要事業者
ダッシュボードの数値から、いくつかの切り口でランキングを抜き出してみました(いずれも各社の公表値・取得時点ベース。優劣評価ではなく、傾向把握の参考としてご覧ください)。
就職者数(実績)が多い会社 TOP5
事業所単位・全分野計の最新年度の就職者数です。総合大手が上位を占めます。
- エス・エム・エス — 50,641人(無期雇用率 100%)
- マイナビ — 31,662人(87%)
- レバウェル — 28,161人(100%)
- クイック — 10,905人(92%)
- スタッフサービス — 10,475人(55%)
無期雇用率を併せて見ると、同じ「実績が大きい」会社でも、長期雇用中心の紹介か、短期・有期も含む紹介かで性格が分かれることが分かります。
医療職の採用規模が大きい会社 TOP5
医療分野の職種(看護職・薬剤師・医師・リハ等)の採用規模を独自スコア化したランキングです。
- トライトキャリア — スコア 36
- マイナビ — 31
- エス・エム・エス — 25
- レバウェル — 24
- エムスリーキャリア — 10
介護・保育で強い会社
分野によって強い会社は入れ替わります。
- 介護:エス・エム・エス(42)/トライトキャリア(42)/マイナビ(41)/ツクイスタッフ(29)
- 保育:トライトキャリア(23)/エス・エム・エス(21)/アスカ(15)/ネクストビート(15)
介護・保育では、総合大手に加えてツクイスタッフやアスカ、ネクストビートといった領域特化型の存在感が増します。「医療は大手、介護・保育は専門特化」と、職種・分野ごとに依頼先を使い分ける発想が有効です。
手数料率が高い職種ランキング(開示各社の平均)
会社ではなく職種の切り口で、平均手数料実績率を高い順に並べたものです。
- 薬剤師 — 約27.1%
- 保育士 — 約26.1%
- 保健師・助産師 — 約24.2%
- リハビリテーション専門職 — 約23.5%
- 看護職 — 約22.7%
- 介護職 — 約21.4%
- 医師 — 約20.6%
希少性や採用競争の強い職種ほど手数料率が高めに出る傾向です。採用予算を組む際の目安になります。
参照にあたっての注意
本ダッシュボードは公的に開示された情報の再集計であり、各社が国に提出・公表した自己申告ベースの数値を含みます。就職者数・離職率は事業所(許可番号)単位=全分野合算で、医療・介護・保育の分野別内訳は開示されていません。採用規模(Ⅰ〜Ⅴ)は実人数ではなく規模の区分です。また、事業者の優劣や順位付け・推奨を行うものではなく、離職率や手数料の高低がサービスの品質を保証するものでもありません。あくまで選定の一次情報としてご活用ください。
このダッシュボードの背景:分散した公開情報を「使えるデータ」に
ミーカンパニーはこれまで、医療機関・薬局・介護施設等の公開情報を収集・整理した「SCUELデータベース」を通じて、医療ヘルスケア領域におけるデータベース構築・標準化に取り組んできました。今回のダッシュボードも、分散して公開されている情報を横断的に使えるデータへ変換する取り組みの一環です。
今回のように、Web上に散らばった公的・公開情報を集め、整理・標準化し、意思決定に使える形へ可視化して示唆を引き出す——この一連のプロセスこそ、私たちが積み上げてきたナレッジです。本ダッシュボードは、JESRA適正認定と厚生労働省の開示情報という、別々に公開されていたデータをつなぎ合わせて作りました。
同じアプローチで、次のようなテーマにも取り組めます。
- 自社の営業エリアや製品に合わせたターゲット抽出・市場の可視化
- 公開情報・各種データの収集・整理・標準化やデータ連携の設計
- 本ダッシュボードのようなカスタムの分析・可視化レポートの制作
——こうしたニーズやご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。活用事例の資料もご用意しています。
▶ データ・資料請求はこちら/お問い合わせはこちら(SCUEL DATABASE)
出典:医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度(厚生労働省委託事業、運営:JESRA)公表の認定事業者一覧、および厚生労働省「人材サービス総合サイト」の各事業所開示情報(令和02〜07年度)。採用規模スコア等の一部指標はミーカンパニー独自の集計による相対指標です。数値は取得時点のもので、最新情報は各出典をご確認ください。