秋冬は新型コロナウイルス感染症やインフルエンザのワクチン接種シーズンです。
これらのワクチンは主に65歳以上の高齢者を対象に定期接種化されています。
ワクチン接種は保険診療に該当しないため、地域ごとの接種状況の違いや医療機関別の接種者数をレセプトデータ等から把握するのは難しい領域です。
しかし、複数のデータを組み合わせることで、ワクチン接種を取り巻く地域の状況が見えてきます。
そこで今回は、感染症の蔓延防止の観点からハイリスクとされる高齢者住宅に注目し、協力医療機関におけるインフルエンザワクチン接種の対応状況を探ってみました。
<使用したデータ(SCUELデータベースより)>
・予防接種データセット
・介護サービス別 協力医療機関データセット
・介護サービス別 利用者数データセット
▶ F県の医療機関の約70%がインフルエンザワクチン接種に対応
F県内の医療機関を対象に、インフルエンザワクチン接種への対応状況を確認したところ、病院では約85%、診療所では約72%の施設が対応していました(※)。
※一般向けに「インフルエンザワクチンに対応」と公開している医療機関を集計。

▶ インフルエンザワクチン接種対応医療機関の中で「サービス付き高齢者向け住宅」の協力医療機関は約4%
F県内でインフルエンザワクチン接種に対応している約3,300件の医療機関のうち、「サービス付き高齢者向け住宅(特定施設入居者生活介護の対象住宅を含む)」の協力医療機関を担っているのは約130件(4%)でした。

今回は一例として「サービス付き高齢者向け住宅」を取り上げましたが、「介護老人福祉施設」など他の介護サービス種別でも同様の集計が可能です。
▶ 協力医療機関が連携する「サービス付き高齢者向け住宅」の利用者数には最大200人以上の差がある
同じ「サービス付き高齢者向け住宅」の協力医療機関でも、連携している住宅数や入居規模には大きな差があります。
F県の協力医療機関の連携先住宅の利用者数合計は、最少7人から最多251人まで幅がありました。
また、利用者数が60人以上の協力医療機関のうち約60%が診療所であり、診療所の管理者(院長)データと紐づけることで、接種医の推定も可能です。

▶ 自治体による助成状況にも差
F県内の市町村で2023年に実施されたインフルエンザワクチン定期接種の助成額を比較すると、自己負担額は最も少ない自治体で1,000円、最も多い自治体で1,650円と、650円の差が見られました。
全国で見ると自己負担額が3,000円となる自治体もあり、地域によって金銭的なハードルが異なることが分かります
*参考|ワクチン接種_公費負担状況データセット *
▶ 新型コロナワクチンでは、自己負担差が5,000円以上となる場合も
別の地域での調査では、高齢者の定期接種において、インフルエンザワクチンと新型コロナウイルス感染症ワクチンの自己負担額を比較したところ、新型コロナウイルスワクチンの方が自治体間での差がより大きい傾向が見られました。
こうした制度の違いは、地域ごとのワクチン接種動向にも影響を与える可能性があります。

▶ SCUELでできること
SCUELでは、医療機関のワクチン接種対応状況や、介護施設と連携する協力医療機関の情報、
自治体の助成制度など、地域医療を可視化する多様なデータをご提供しています。

「他地域との比較を見たい」「別の介護サービス種別で分析したい」といったご要望にも対応可能です。
気になるデータがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。