2026.06.15

高齢者住まい紹介事業の市場構造と紹介料の最新動向(2026年6月調査)

はじめに

最近、SCUELには「高齢者住まいの紹介事業者の数や規模を把握したい」「施設の料金や人員体制をベンチマークしたい」といったお問い合わせが増えています。2024年以降、紹介料の高額化が報じられ、届出公表制度の見直しが進むなかで、この領域への関心が急速に高まっていることが背景にあると考えられます。

「老人ホーム紹介センター」「入居相談室」——こうした高齢者住まいの紹介事業者は、要介護の高齢者やその家族に代わって、本人の状態・予算・地域に合った有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの入居先を探し、施設へ橋渡しする「入居相談・仲介」の担い手です。入居が成約すると、紹介事業者は施設側から紹介料を受け取ります。

そこで本レポートでは、高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)が運営する「届出紹介事業者公表制度」の登録法人データ(2026年6月時点・全841法人)を収集・分析し、紹介事業に活用できるデータの観点を整理しました。

紹介事業のビジネスモデルと紹介料の相場

紹介事業者の収益は、入居が成約した際に施設から受け取る紹介手数料が中心です。業界資料によれば、紹介料は2000年頃の10〜20万円から、2010年以降は1件あたり30万円程度へと上昇し、医療依存度の高い入居者では100万〜150万円規模の事例も報じられています。

この高額化の背景には、施設側の収益構造があります。医療的ケアが必要な入居者には医療保険から相対的に高い報酬が支払われるため、施設には高い紹介料を払ってでもそうした入居者の紹介を望むインセンティブが働きます。高住連が公表したアンケートでは、紹介料の決め方について「ホームごとに介護度や医療必要度等を考慮して決めている」との回答が約48%を占めました。

こうした状況を受け、高住連は2024年12月、厚労省老健局の通知を踏まえて届出制度の運用を改定し、「社会保障費に応じた金額設定は厳に慎む」等の遵守事項を明確化しています(2025年1月届出分より適用)。紹介料の透明化と適正化は、いま医療介護領域で進行中の重要トレンドの一つといえます。

市場全体像:841法人・3,411相談員・1,265拠点

届出公表制度に登録された紹介事業者は、全国で841法人。相談員数(記載のある813法人の合計)は3,411人、相談窓口となる相談拠点は全国1,265カ所にのぼります。

指標補足
届出法人数841法人市場全体(届出公表制度ベース)
相談員 総数3,411人記載のある813法人合計/平均4.2人・中央値2人
相談拠点(相談所)数1,265カ所全国の相談窓口の実数
契約法人数(中央値)70最大6,500・各社自己申告
契約ホーム数(中央値)546最大36,000・各社自己申告
ホームページ公開679法人全体の80.7%が公開

特徴1:85%超が相談員5人以下の「小規模分散型」

相談員数の分布を見ると、1人で運営する事業者が約3割、2〜5人を合わせると約85%が相談員5人以下の小規模事業者です。多くが地域密着の少人数体制で運営されており、参入障壁の低さと事業者数の多さがこの市場の競争環境を形づくっています。

相談員数事業者数構成比
1人23829.3%
2〜5人45756.2%
6〜10人769.3%
11〜20人243.0%
21人以上182.2%

※相談員数の記載がある813法人を集計。

特徴2:上位法人に偏る「契約ホーム網」と事業モデルの二極化

一方で、契約ホーム数(紹介可能な施設網の自己申告値)は上位法人に大きく偏ります。相談員数トップ10だけで全相談員の約21%を占め、契約ホーム網はさらに集中度が高い傾向です。

順位法人名相談員契約法人契約ホーム相談所
1株式会社あいらいふ1502,00012,00058
2株式会社笑美面1341,44110,37718
3株式会社絆楽881,0308,8770
4株式会社ソナエル853,05211,21825
5株式会社ベネッセシニアサポート635908,2001
6株式会社エイジプラス452,10010,0008
7ライフアシスト株式会社406738,1642
8東京ロイヤル株式会社378385,8256
9ケアミックス株式会社367206,10011
10神奈川ロイヤル株式会社358385,8254

※契約法人数・契約ホーム数は各社の自己申告値で、同一施設を複数社が計上する重複を含みます。

トップの株式会社あいらいふは相談員150人・58拠点・契約ホーム1.2万件を擁し、規模・拠点・契約網のいずれでも突出します。その一方で、相談拠点を1カ所に絞りつつ数千件規模の契約ホーム網を持つ事業者も存在します。「対面の相談拠点で勝負する型」と「契約網・データベースで勝負する型」へと、事業モデルが分かれつつある点は、この市場を読むうえで重要な視点です。

紹介事業に活用できる SCUEL データ

紹介事業者が家族に納得感のある提案を行うには、「施設を客観的に比較できるデータ」が欠かせません。SCUEL の介護データベースは、全国の介護施設・運営法人を網羅し、紹介の現場で使える属性を備えています。

  • 規模・稼働の把握:利用者数・定員数・職種別従業員数から、施設の規模や人員体制を把握。「定員に対する職員数」など、手厚さや稼働の比較ができます。
  • 料金情報:施設の利用料金を収録。同一エリア・同種サービスの料金水準と比較し、相対的な割安/割高を客観的に示せます。
  • 加算・医療連携:170種類以上の加算、協力医療機関を網羅。医療依存度の高い入居希望者に対し、看護体制や医療連携の整った施設を選定できます。
  • 法人規模・経営:「ヘルスケア運営法人データセット」では、介護サービスを展開する約6.7万法人の売上情報などを収録。運営法人の規模・安定性を踏まえた提案や、M&A検討にも活用できます。
  • 名寄せ・CRM連携:法人番号付与99.9%、併設サービスも管理。SCUEL MDM による名寄せで、自社の CRM(Kintone/Salesforce 等)やエクセル営業リストへそのまま取り込めます。

SCUELデータなら、「ベンチマークとして活用できます」

施設選びで家族が最も不安に感じるのは、「この施設は妥当なのか」を測る物差しがないことです。SCUEL のデータを使えば、同一エリア・同種サービスの中央値や分布を「物差し」として示しながら、客観的な紹介ができます。以下は活用イメージです(数値は例)。

  • 料金のベンチマーク:「このホームの月額利用料は、同じ市区にある介護付き有料老人ホームの中央値より◯万円低めです。費用を抑えたいというご希望に合っています。」
  • 人員体制のベンチマーク:「定員50名に対して介護・看護職員が◯名と、同規模施設の平均を上回る手厚い配置です。」
  • 医療対応のベンチマーク:「協力医療機関と訪問看護の体制が整っており、医療的ケアが必要になっても対応しやすい施設です。」
  • 運営法人のベンチマーク:「運営法人は同エリアで複数施設を展開し、売上規模も安定しています。長期で入居いただく際の安心材料になります。」

こうした数字に基づく説明は、紹介事業者の信頼性を高め、過度な紹介料競争ではなく「提案品質」で差別化する武器になります。透明化が求められる時代だからこそ、データに裏づけられた提案の価値はいっそう高まっていくのではないでしょうか。

まとめ

  • 高齢者住まい紹介事業は、全国841法人・相談員3,411人・相談拠点1,265カ所を擁する一定規模の市場。
  • ただし約85%が相談員5人以下の小規模事業者で、地域密着の分散型構造。
  • 契約ホーム網は上位法人に集中し、対面型/契約網型へと事業モデルの二極化が進む。
  • 紹介料の高額化を背景に届出公表制度を通じた透明化が進行中。今後は、料金・人員・医療連携などを客観的に比較できるデータに基づく提案品質が差別化の鍵となる。

出所:高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)「届出紹介事業者検索」および各社詳細ページ(koujuren.jp、全841法人)を基に SCUEL 作成。紹介料・制度動向は厚生労働省・高住連の公表資料および報道に基づく。トーク例の数値は説明のためのイメージです。