横浜市|がんスクリーニングの地域ギャップ
誰が対象になり、どのがんが体系的に見られているか【地域保健・健康増進事業報告 2016〜2024年度/人口動態統計 2024年/NDBオープンデータ】
本ページでいう「スクリーニングの空白」:「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で対策型検診(住民検診)が定められていない部位を、がん死亡数と対比して示すための本サイト独自の整理です。当該部位に検査手段が無いことや、任意型検診・精密検査が行われていないことを意味するものではありません。対策型検診の対象は、死亡率減少効果の科学的根拠と不利益の均衡にもとづいて定められています。
対策型検診がある5部位が占めるがん死亡
48.5%
胃・肺・大腸・乳・子宮頸の合計/全がん死亡(全国・2024年)
対策型検診が定められていない部位の年間死亡
6.4万人
膵臓・胆嚢胆管・卵巣の合計。全がん死亡の16.6%
横浜市の受診率と全国平均の差
−6.2pt
乳がん検診。全国を下回るのは4検診(胃・肺・大腸・乳)
地域の母集団 ― 誰が対象になるのか
いまの人口構成
健診対象年齢(40〜74歳)は1,758,514人で、人口の46.9%。濃い色がその層です。
出典は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」年齢階級別人口(市区町村別・総計)。住民登録ベースのため、昼間この地域にいる就業者は含みません。
これからの人口構成(40〜74歳)
健診事業の分母そのものです。2025年の1,763,782人を基準に、2040年 −3.5%/2050年 −12.7%。
2020年は国勢調査による実績値、2025年以降は推計値です。出典は国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(令和5年推計)。
対策型5がん検診の受診状況(横浜市)
| 検診名 | 最新(2024) | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 推移 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 胃がん検診 算定対象 50〜69歳 | 3.8%全国 6.7%・−2.9pt | 5.2 | 5.1 | 5.0 | 4.3 | 3.3 | 2.9 | 3.5 | 3.7 | 3.8 | |
| 肺がん検診 算定対象 40〜69歳 | 2.9%全国 5.8%・−2.9pt | 3.0 | 3.0 | 3.2 | 2.7 | 2.3 | 2.5 | 3.0 | 2.8 | 2.9 | |
| 大腸がん検診 算定対象 40〜69歳 | 4.1%全国 6.7%・−2.6pt | 5.0 | 4.7 | 4.4 | 4.7 | 3.5 | 3.9 | 4.3 | 4.3 | 4.1 | |
| 子宮頸がん検診 算定対象 20〜69歳 | 16.6%全国 16.0%・+0.6pt | 17.0 | 17.3 | 17.1 | 16.0 | 15.3 | 15.6 | 16.7 | 16.5 | 16.6 | |
| 乳がん検診 算定対象 40〜69歳 | 9.9%全国 16.1%・−6.2pt | 16.1 | 14.0 | 13.1 | 11.5 | 9.0 | 8.5 | 10.0 | 10.3 | 9.9 |
市区町村が実施するがん検診の実績であり、職域健診・人間ドックを含む住民全体の受診率ではありません。算定対象年齢の住民数を分母とし、胃・子宮頸・乳がん検診は2年に1回の受診が推奨されるため(当該年度+前年度−2年連続受診者)÷対象者数で算出しています。この地域の他の検診(肝炎ウイルス・骨粗鬆症・歯周疾患)はこちら。
部位別のカバレッジ ― どのがんが体系的に見られているか
| 部位 | 標準的に用いられる手段 | 年間死亡数(全国) | 対策型検診 | この地域の受診率 |
|---|---|---|---|---|
| 肺 | 胸部エックス線検査(指針)/低線量CTは任意型 | 75,569人 | あり | 2.9% |
| 大腸 | 便潜血検査(指針)/大腸内視鏡 | 54,416人 | あり | 4.1% |
| 膵臓 | 腹部超音波による間接的な観察にとどまる | 41,235人 | なし | ― |
| 胃 | 上部消化管内視鏡/胃部エックス線検査 | 37,867人 | あり | 3.8% |
| 胆嚢・胆管 | 腹部超音波による間接的な観察にとどまる | 17,232人 | なし | ― |
| 乳房 女性 | マンモグラフィ | 15,869人 | あり | 9.9% |
| 卵巣 女性 | 確立した検診手段がない | 5,116人 | なし | ― |
| 子宮頸部 女性 | 細胞診 | 2,751人 | あり | 16.6% |
膵臓がんの年間死亡は41,235人で、胃がん(37,867人)を上回り部位別で第3位です。それでいて、指針に基づく対策型検診は設けられていません。この空白は、施設が装置を追加しても埋まりません。
この地域の規模と、他地域との比較
部位別の年間期待罹患数
全国の年齢階級別罹患率をこの地域の人口構成に当てはめた期待値です(間接法の分母にあたる考え方で、地域の実測罹患数ではありません)。対策型検診が定められていない部位にも、同じだけの人数が見込まれます。
| 部位 | 年間の期待罹患数 | 対策型検診 | この地域の受診率 |
|---|---|---|---|
| 肺 | 3,392人 | あり | 2.9% |
| 大腸 | 4,298人 | あり | 4.1% |
| 膵臓 | 1,312人 | なし | ― |
| 胃 | 2,872人 | あり | 3.8% |
| 胆嚢・胆管 | 569人 | なし | ― |
| 乳房 | 2,957人 | あり | 9.9% |
| 卵巣 | 381人 | なし | ― |
| 子宮頸部 | 309人 | あり | 16.6% |
横浜市の人口構成に全国の年齢階級別罹患率(2023年診断)を乗じた期待値であり、当該地域で実際に診断された罹患数ではありません。地域固有の罹患リスクの差は反映していません。出典は国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」全国がん登録罹患データ(rateシート)。
神奈川県内・全国での位置
| 指標 | 横浜市 | 神奈川県内順位 | 全国順位 |
|---|---|---|---|
| 健診対象年齢(40〜74歳)人口 | 1,758,514人 | 1/33位 | 1/1736位 |
| 人口に占める健診対象年齢の割合 | 46.9% | 24/33位 | 929/1736位 |
| 胃がん検診 受診率 | 3.8% | 22/32位 | 1526/1730位 |
| 肺がん検診 受診率 | 2.9% | 30/33位 | 1578/1708位 |
| 大腸がん検診 受診率 | 4.1% | 28/33位 | 1639/1738位 |
| 子宮頸がん検診 受診率 | 16.6% | 6/33位 | 974/1738位 |
| 乳がん検診 受診率 | 9.9% | 25/33位 | 1671/1734位 |
| 健診対象年齢人口の増減(2025→2040) | −3.5% | 6/33位 | 184/1723位 |
| 納税義務者1人あたり課税対象所得 | 4,395,000円 | 4/33位 | 43/1736位 |
| 国民健康保険の加入率 | 15.8% | 3/33位 | 85/1707位 |
| 年間の期待罹患数(8部位計) | 16,091人 | 1/33位 | 1/1736位 |
個別の施設名は含みません。市区町村単位の集計値のみを掲載しています。全国順位の母数は、当該指標を掲載できる市区町村の数です。課税対象所得は2024年度・所得割の納税義務者1人あたりで、出典は総務省「市町村税課税状況等の調」第11表(市町村別内訳)。国民健康保険の加入率は低いほど順位が上です(被用者保険に加入している層が厚いことを示し、健康保険組合の補助が効く価格帯の目安になります)。出典は厚生労働省「国民健康保険事業年報」(令和5年度)保険者別データ A表。
地域で実際に行われている検査の量(横浜医療圏)
受診率は「案内が届いた人のうち何人が受けたか」ですが、こちらは施設の申告ではなくレセプトの算定実績です。NDBオープンデータは二次医療圏までの公表のため、横浜市 が属する横浜医療圏の値を掲載しています。
| カテゴリー | 最新年度 | 2019年度比 | 全国シェア | 推移2019〜2024年度 |
|---|---|---|---|---|
| D検査 総計 | 16,325万回 | +14.0% | 2.77% | |
| 腫瘍マーカー・がん関連 | 41万回 | +4.2% | 1.98% | |
| 内視鏡 | 86万回 | +8.2% | 3.40% | |
| E画像診断 総計 | 1,110万回 | +10.1% | 2.82% | |
| CT撮影 | 88万回 | +15.0% | 2.55% | |
| MRI撮影 | 54万回 | +15.4% | 3.16% | |
| N病理診断 総計 | 124万回 | +14.1% | 3.43% | |
| 細胞診 | 28万回 | +12.9% | 3.24% |
集計結果10未満の秘匿等により、掲載値は全国計と一致しない場合があります。カテゴリー分類はSCUELによる区分です。横浜医療圏の検査全体を見る。
陽性が出たあとの受け皿(横浜医療圏)
新しいスクリーニングを検討するとき、最初に確認すべきは検査そのものではなく、結果が出たあとに精査へつなげられるかです。がん診療連携拠点病院は二次医療圏を単位に整備されるため、市区町村ではなく圏域で数えています。
| 区分 | 施設数 |
|---|---|
| 地域がん診療連携拠点病院 | 9施設 |
| 都道府県がん診療連携拠点病院 | 1施設 |
| 合計 | 10施設 |
出典は国立がん研究センターがん情報サービス「がん診療連携拠点病院等 現況報告書データ」様式4(全般事項)です。個々の施設の受入枠や紹介実績は含みません。
部位別の入院診療の実績(横浜医療圏)
拠点病院の指定の有無だけでは、その部位を実際に診ているかは分かりません。DPC対象病院の退院患者調査から、診断群分類ごとの年間退院患者数と、該当する退院患者がいた病院の数を数えています。「人口あたり」は圏域人口1人あたりの退院患者数を全国平均=100として指数化したもので、100を下回るほど域外の医療機関で治療を受けている患者が多いことを示唆します(患者の流出入を直接測定したものではありません)。
| 部位 | 退院患者がいた病院 | 年間の退院患者数 | 令和4年度比 | 推移令和4年度〜令和6年度 | 人口あたり全国=100 |
|---|---|---|---|---|---|
| 肺 | 27施設 | 7,971件 | +6.9% | 83 | |
| 大腸 | 35施設 | 8,148件 | +8.6% | 91 | |
| 膵臓 | 22施設 | 3,792件 | +22.9% | 100 | |
| 胃 | 24施設 | 3,338件 | −2.9% | 80 | |
| 胆嚢・胆管 | 19施設 | 986件 | −1.2% | 85 | |
| 乳房 | 22施設 | 3,967件 | +13.5% | 83 | |
| 卵巣 | 13施設 | 1,150件 | +12.3% | 68 | |
| 子宮頸部 | 16施設 | 3,299件 | +6.8% | 96 |
対象の診断群分類は 肺=肺の悪性腫瘍/大腸=結腸・直腸肛門の悪性腫瘍/膵臓=膵臓、脾臓の腫瘍(良性を含む)/胃=胃の悪性腫瘍/胆嚢・胆管=胆嚢、肝外胆管の悪性腫瘍/乳房=乳房の悪性腫瘍/卵巣=卵巣・子宮附属器の悪性腫瘍/子宮頸部=子宮頸・体部の悪性腫瘍。出典は厚生労働省「令和6年度DPCの評価・検証等に係る調査(退院患者調査)」疾患別手術別集計。DPC対象病院のみの集計で、DPCに参加していない病院・診療所・外来のみの診療は含みません。件数は入院1件(1退院)を単位とするため、同一患者の複数回入院はそれぞれ計上されます。「その他の手術(輸血以外の再掲)」は再掲のため合計から除いています。10件未満などで非公表となった区分は加算していないため、実数はこれ以上になりえます。
圏域内で件数の多い病院(上位3施設)
紹介先を検討するときの出発点になります。受入枠や紹介実績は含みません。
| 部位 | 病院(年間件数) |
|---|---|
| 肺 | 神奈川県立がんセンター(1,219件)/公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター(1,036件)/横浜市立市民病院(760件) |
| 大腸 | 昭和医科大学横浜市北部病院(1,292件)/公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター(837件)/神奈川県立がんセンター(626件) |
| 膵臓 | 神奈川県立がんセンター(1,287件)/公立大学法人 横浜市立大学附属病院(472件)/公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター(268件) |
| 胃 | 神奈川県立がんセンター(514件)/公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター(456件)/公立大学法人 横浜市立大学附属病院(235件) |
| 胆嚢・胆管 | 公立大学法人 横浜市立大学附属病院(234件)/神奈川県立がんセンター(218件)/昭和医科大学藤が丘病院(65件) |
| 乳房 | 神奈川県立がんセンター(800件)/昭和医科大学藤が丘病院(382件)/横浜市立みなと赤十字病院(295件) |
| 卵巣 | 神奈川県立がんセンター(279件)/公立大学法人 横浜市立大学附属病院(262件)/昭和医科大学横浜市北部病院(120件) |
| 子宮頸部 | 神奈川県立がんセンター(795件)/公立大学法人 横浜市立大学附属病院(541件)/昭和医科大学藤が丘病院(455件) |
出典は厚生労働省「令和6年度DPCの評価・検証等に係る調査(退院患者調査)」疾患別手術別集計。DPC対象病院のみで、DPCに参加していない病院は件数の多寡にかかわらず出てきません。病院名のリンクは当社の病院プロファイル(病床機能報告にもとづく)へ接続しています。施設名で突合できなかった病院はリンクが付きません。
この数値の読み方
- 受診率の高低は、検診ごとに向きが違います。子宮頸 が全国を上回る一方、胃・肺・大腸・乳 は下回っています。受診勧奨の届き方に偏りがあることを示します。
- 受診率の低さは、市場の小ささではありません。この数字は市区町村が実施する住民検診の実績です。職域健診・人間ドックで受けている層は分母の外にあり、昼間人口が多い地域ほどその差が開きます。
- 対策型でカバーされない部位が、がん死亡の16.6%を占めます。膵臓・胆嚢胆管・卵巣は年間63,583人。受診率という指標そのものが存在しない領域です。
- この空白は設備投資では埋まりません。装置や内視鏡をどれだけ整備しても、部位別の検診体系の外にある領域は残ります。横断的に見る手段があるかどうかが論点になります。
出典:厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」(健康増進編・市区町村表)各年度/厚生労働省「人口動態統計」(国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」集計表・2024年)/厚生労働省「NDBオープンデータ」第6〜11回/厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」/国立がん研究センターがん情報サービス「がん診療連携拠点病院等 現況報告書データ」様式4(全般事項)。SCUEL集計(SCRN v1.1)。