歯科診療所の口腔内スキャナ導入ポテンシャルを、歯科系ビッグデータを用いて予測。予測した結果レポートも無償で提供。
調査背景
- 2024年度の診療報酬改定において、歯科固有の技術を評価する施設基準として「光学印象」が新設されました。
- 「光学印象」は、デジタル印象採得装置(口腔内スキャナ)を用いて、窩洞を直接印象採得・咬合採得した場合に評価される診療報酬で、従来の粘土(シリコン印象材など)での歯の型取りとは異なり、口腔内をスキャンして3Dデータをデジタルで取得する型採りです。
- 口腔内スキャナの利用は、正確性・快適性・効率性などの観点から歯科診療の質の向上に寄与することが期待される技術です。
- 2024年9月時点における「光学印象」の施設基準届出件数は、約67,000件の歯科診療所のうち8,983施設(13%)ですが、今後も同診療報酬の算定に向けて届出を行う歯科診療所は増加していくことが予想されます。
- そこでミーカンパニー株式会社では、「光学印象」届出施設のデータ分析を通して、将来的に口腔内スキャナを導入するポテンシャルのある歯科診療所の属性評価を行いました。
調査概要
- 調査手法:web調査(地方厚生局や都道府県の公開情報もとに調査)
- 実施期間:2024年9月~10月
- 対象地域:全国
- 対象施設:歯科診療所
調査結果
1)「光学印象」届出施設と届出なし施設の比較
2024年9月時点で「光学印象」の届出を確認できた8,983施設(以降「届出群」)と、届出がなかった57,895施設(以降「未届出群」)の診療所属性を比較し、両群間の割合差が大きな項目を抽出しました。
■法人区分
「光学印象」届出群の約5割は法人運営の歯科診療所であるのに対して、未届出群の約8割は個人運営の歯科診療所でした。
■標榜診療科
「光学印象」届出群は、小児歯科・歯科口腔外科・矯正歯科など複数の歯科診療科目を掲げている診療所が多く、3診療科以上標榜している診療所が約8割でした。一方、未届出群で3診療科以上標榜している診療所は半数未満に留まりました。
■管理者推定年齢・営業年数
管理者(院長)の推定年齢は、届出群の平均49.9歳、未届出群の平均57.7歳で届出群の方が8歳程若い傾向が見られました。同様に営業年数も、届出群の平均16.9年、未届出群の平均24.1年と届出群の方が7年程新しい診療所である傾向が見られました。
■外来患者数
「光学印象」届出群の約4割は1日平均外来患者数が30人を上回っており、平均41.7人でした。一方、未届出群は1日平均外来患者数が30人以下である診療所が半数以上を占め、平均24.3人でした。
■施設基準
施設基準について群間で届出割合の差が大きかったものを見ると、「歯科外来診療医療安全対策加算」「歯科外来診療感染対策加算」「手術用顕微鏡加算」「歯科技工士連携加算」などが「光学印象」届出群でより多く届けられている傾向が見られました。
2)今後「光学印象」の届出可能性が高い歯科診療所
上記1)の結果を踏まえ、「光学印象」届出群に多く見られた診療所属性から5項目を選定し、将来的に「光学印象」の届出施設になりえるポテンシャル要因として扱えるか、ロジスティック回帰モデルを構築して検証を行いました。
2024年9月時点の診療所属性から「光学印象」の導入ポテンシャルを予測した結果と、2024年10月時点の「光学印象」新規届出状況を比較したところ、9月時点で「光学印象」の届出がなく、同時点の「光学印象」の届出ポテンシャル0.5以上(※1=届出有)の診療所1,406件のうち、10月に実際に「光学印象」の届出が確認された診療所は50件(3.6%)でした。一方、9月時点で「光学印象」の届出がなく、同時点の「光学印象」の届出ポテンシャル0.5未満の診療所56,489件について、10月に「光学印象」届出が確認されたのは396件(0.7%)に留まり、予測から1か月後の検証結果において、ポテンシャル要因保有診療所では「光学印象」の届出が行われる可能性が相対的に高い傾向が示唆されました。
さらに、予測に使用した5項目の充足度合いをもとに、「光学印象」の届出ポテンシャル(口腔スキャナ導入ポテンシャル)が高い順に歯科診療所を分類すると、Tier1:約800施設、Tier2:約4,300施設、Tier3:約9,500施設を抽出することができました。
無償提供レポート
お問い合わせいただいた方に限り、分析の詳細レポートの説明も承っております。
*企業の方に限ります。
- [光学印象]届出施設と未届出施設の属性比較結果の詳細
- 予測に使用した5項目の内容及びTire別該当施設数の詳細
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3)まとめ
オープンデータをもとに、新設の歯科施設基準「光学印象」の届出施設の傾向について調査を行った結果、光学印象届出診療所は「法人による開設診療所」であり、「標榜診療科_3科目以上」で「1日平均外来患者数_25人以上」、施設基準の「歯科外来診療医療安全対策加算または歯科外来診療感染対策加算」「手術用顕微鏡加算」等を届出ている傾向が見られました。またこれらの項目は、将来的に光学印象を届出る施設(口腔内スキャナの導入)の予測にも有用である可能性が示唆されました。
SCUELデータベースでは、今後も地域の医療動向の把握や可視化に役立つデータの収集・分析に努めてまいります。
■SCUELデータベースについて
本調査で利用している歯科データベースの他にも、医薬・介護・福祉に関して理解を深めるための各種データベースを保有しております。
歯科データベース:https://scueldb.com/dental
■ミーカンパニーについて
ミーカンパニー株式会社は、2010年設立以来、医療機関・薬局・介護・障害福祉データベース「SCUEL®(スクエル)データベース」を構築してきました。「データでこれからの日本の医療・介護を支えること」を事業理念とし、高鮮度で精緻なデータベースの提供を通じて、地域包括ケアシステムの実現や、患者と医療、家族と介護をつなぐことを推進します。
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