前回の記事では、主に「病院」の大きな動向に迫りました。しかし、多くの営業担当者にとって、より身近な存在は地域に根差した「診療所」ではないでしょうか。
そこで今回は、分析のスコープを一般診療所に移します。
一見すると、街のクリニックの数はそれほど変わっていないように感じるかもしれません。ですが、その水面下では、毎年数千もの施設が開業し、ほぼ同じ数が市場から姿を消しているという、想像以上に活発な新陳代謝が繰り返されています。
そして、本当に見逃せないのは、施設の「増減」だけではありません。日々運営されている既存の診療所の中で静かに起きている無数の「変化」こそが、新たな提案の糸口となるのです。
まずは、この1年で実際にどれだけの変化が起きたのか、その全体像をご覧ください。
▼この1年で変化した基本情報(一般診療所・歯科診療所の合計)
- 名称変更:1,666件
- 住所変更:3,109件
- 管理者(院長など)の変更:4,302件
- 開設者の変更:3,051件

これらの数字を前にして、「うちの営業リスト、ちゃんと更新できているだろうか…」と不安になった方もいらっしゃるかもしれません。これらの変化は守りのための「リスト更新」情報であると同時に、攻めのための「アポイントのきっかけ」でもあるのです。
「リストの修正」で終わらせるには惜しい、「移転・名称変更」の裏側
「クリニックの名前が変わっていた」「訪問したら移転していた」。現場ではよくある話ですが、これを単なる情報修正で終わらせるのは非常にもったいないことです。
移転・拡張の裏側には、事業拡大やリニューアルといった前向きな投資計画が隠れているケースが少なくありません。院内の設備やシステムを一新する絶好のタイミングであり、営業にとってはまたとない提案のチャンスと言えるでしょう。
「院長交代」がもたらす最大のチャンス
数ある変化の中で、私たちが最も重要だと考えているのが、年間4,302件にも上る「管理者」の交代です。
長年通っても中々話が進まなかったのに、院長先生が変わった途端、これまで門前払いだった提案を熱心に聞いてもらえた。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
決裁者の交代は、まさに営業の潮目が変わる瞬間です。
これまで築かれてきた人間関係や取引のしがらみが一旦リセットされ、新しい院長は、自身の理想の医療を実現するために、新たな設備やシステム導入に非常に意欲的です。眠っていた顧客リストが、院長の交代という情報一つで、一気に最優先でアプローチすべき「宝の山」に変わる可能性を秘めています。
市場の新陳代謝を捉え、一歩先を行く
ここで、冒頭で触れた「新陳代謝」に話を戻しましょう。
例えば無床診療所では、この1年間で2,284件が新規開業し、一方で2,080件が市場から姿を消しています。

競合もまだ知らない、まっさらな状態のクリニックにいち早くアプローチできるかどうか。そのスピード感が、大型案件の受注を大きく左右します。同時に、有床診療所のように減少傾向にある市場(新規38件に対し廃止104件)を正確に把握し、リソースを成長領域に振り分けることも、賢い営業戦略と言えるでしょう。
あなたのリストは「生きた情報」になっていますか?
今回は、「診療所」に焦点を当て、そのダイナミックな変化をご紹介しました。
貴社の顧客リストは、もはや単なる名簿ではありません。それは、次の一手を示唆してくれる、現場で使える「生きた情報」なのです。
変化の兆候をいち早く掴み、確かな一歩を踏み出すための武器として、ぜひSCUELデータの活用をご検討ください。
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