歯科技工所のための「SCUEL施設基準データ」を活用した営業戦略ガイド

1.制度とSCUELデータで読み解く営業のヒント

2020年代に入り、歯科技工業界は「デジタル化の急進展」「技工士人材の減少」「制度改正による加算強化」といった三重の変革に直面しています。
このなかで、歯科医院の届出情報や施設基準は、医院の志向や連携ニーズを把握する重要なシグナルです。これらを基に営業戦略を設計することで、効率よく、深い関係性を築けるターゲットにアプローチすることが可能になります。

記事を書いた背景

近年、SCUELには歯科技工所様から「外来患者数の多い歯科医院を知りたい」「どこに提案余地があるのか?」といった問い合わせが急増しています。背景には、以下のような変化が急速に進んでいる現状があると考えています。

  • 歯科技工士連携加算や光学印象加算の普及
  • CAD/CAMなどデジタル技工の保険対応拡大
  • 歯科技工士の人手不足と医院の外注志向の高まり
  • 歯科診療所の高齢化/廃業件数の増加

このような環境変化の中で、「制度とSCUELデータベースをもとにデータを活用した営業活動を構築したい」という声に応えるため、本記事をまとめました。

2. 届出データにみる市場動向と分布

次のグラフは、地域別における技工関連届出(歯技工・歯技連1・歯技連2・光学印象)の推移を示しています。縦軸は歯科診療所の施設数、横軸は月(2023年6月〜2025年3月)で、各地域ごとに届出件数の時系列変化がわかります。

紫:光学印象(口腔内スキャナ等の使用を届出)・赤:歯技工(院内に歯科技工士を配置している)
・青:歯技連1(固定外注の技工士連携)・オレンジ:歯技連2(随時外注の技工士連携)

光印象(紫)は1.5倍近くに増加

  • 届出推移グラフを見ると、光学印象の届出件数は2023年6月から2025年3月にかけてほぼ1.5倍近くに増加しており、他の項目と比べても最も勢いのある上昇カーブを描いています。歯科技工所にとって、デジタル補綴ワークフロー対応が必須の時代へ移行しています。

歯技連1(青)と歯技連2(オレンジ)も堅調に増加

  • ほぼすべての地域で2023年6月から2025年3月にかけて増加しており、歯科技工所との連携体制を明文化・加算化する医院が増えており、制度活用意識の高まりが見て取れる。

歯技工(赤色)は横ばい or 微増

  • 一部地域(北海道・東北)では微増だが、大都市圏ではほぼ横ばい
  • 院内技工士の配置が維持されているものの、技工士の高齢化・人手不足などにより今後は減少傾向に転じる可能性

2025年3月時点 届出状況(全国・都道府県別)

届出区分全国率傾向
光学印象(光印象)16%前年比急増中。特に都市部で導入加速
歯科技工(歯技工)10%院内技工士の配置は減少傾向。地方でやや高め
歯技連1(固定外注)25%固定技工所との連携が主流化しつつある
歯技連2(随時外注)21%地方・中小規模医院で多い。柔軟性を好む医院層

3. 届出別ターゲティング戦略

届出状況営業リスクとチャンスの見極め営業行動のガイドライン
歯技連1・2の届出なし制度を知らない or 関心が低い。外注も決まっていない傾向。 「届出支援」+「加算導入」+「外注先提案」から関係を築く

例)「加算が取れる仕組み」「届出を手伝います」といった“制度と支援”のセット提案
歯技連2あり技工所を症例ごとに使い分けており、固定契約はしていない傾向。品質/納期で「固定化(歯技連1)」への移行を促す

例)「納期が安定する」「同じ技工士がずっと見る」など“安心と効率”の訴求
歯技連1あり既に特定の技工所と固定契約。制度も理解している傾向。差別化提案(デジタル、即日対応、特殊材)で切替・補完狙い

例)「他社との違い」「デジタルに強い」などの**“差別化勝負”**
歯技工あり院内に技工士を抱えており、自前で多くの技工物を対応している傾向。高齢化や人材不足を見据えた「部分外注・段階移行」を提案

例)「急ぎのときだけ外注」「設計だけ頼める」などの“一部アウトソース提案”

4. 地域別戦略の考え方(エリア×届出率)

地域区分特徴営業ポイント
関東・中部・近畿(東京・神奈川・愛知・大阪)外注+デジタル先進エリア競合との質・対応力の勝負、価格より提案力重視
東北・中国・四国(秋田・福井・高知・島根)院内技工率高く、切替期にある歯技工→歯技連化の提案、「引退支援」「即戦力外注」訴求
沖縄・福島など届出率低く、未開拓層多い「届出支援+連携構築」から信頼関係を築く新規営業の狙い目

5. 施設基準を読み解く:提案を強化するレンズ

その他、歯科診療所の診療内容や傾向を推測するのに役立つ施設基準の例は以下のとおり。

分類施設基準名意味・狙い(仮説)
デジタル補綴光印象、歯CAD、手顕微加デジタルワークフロー、CAD対応、精度重視
義歯・咬合咀嚼機能1/2、咬合圧、歯リハ2義歯ニーズ大/咬合評価志向。義歯精度・修理体制訴求可
訪問診療系歯訪診、在歯管、歯援診1/2訪問歯科との技工連携(即日修理、簡易義歯)
高度治療系手術歯根、GTR、補管再治療症例、精密印象、マイクロ対応技工などがニーズに合致

歯科施設基準の解説一覧(営業活用視点)

略称正式名称概要・制度の意味技工所側の営業への示唆
歯技工歯科技工加算1・2院内に常勤の歯科技工士を配置し、技工物を院内で作製できる体制院内完結傾向だが、外注のバックアップや引退対策の営業余地あり
歯技連1歯科技工士連携加算1/光学印象加算固定の外注技工所と連携し、技工指示・報告体制が整備されている医院連携強化型医院。品質・精度・納期対応力で切替または補完提案
歯技連2歯科技工士連携加算2外注技工所との随時委託(固定化されていないが、加算対象)継続契約(歯技連1)への移行提案が営業のチャンス
光印象光学印象加算光学印象(口腔内スキャナー)を用いて技工物作製を行う体制CAD/CAM連携、STLデータ対応、設計代行などが響く
歯CADCAD/CAM冠・インレー届出CAD設計・ミリング補綴物が算定可能な体制デジタル技工ワークフロー構築支援、素材提案が有効
咀嚼機能1/2/咬合圧有床義歯の咀嚼機能検査・咬合評価義歯の機能評価・咬合調整を重視している医院精密義歯・義歯修理・補綴相談の余地あり
歯援診1/2在宅療養支援歯科診療所訪問診療を実施する体制を持つ医院訪問技工対応(義歯修理・即日納品)がアピールポイント
在歯管/在推進在宅患者歯科治療時医療管理料/在宅歯科医療推進加算訪問歯科を定期的に行い、記録・連携を重視している医院在宅義歯、仮義歯、持参修理対応などを提案可
手顕微加手術用顕微鏡加算顕微鏡を使用した精密診療を実施している高精度技工物、マイクロスコープ下での適合確認が求められる
GTR/手術歯根歯周外科・歯根端切除関連加算難度の高い補綴や外科治療がある医院精密印象、プロビジョナル、インプラント技工などで連携可能
歯訪診歯科訪問診療料注15(在宅技工関連)訪問歯科と技工連携が制度化されている医院訪問歯科向け義歯の事前製作・修理体制が営業の切り口に

6. まとめ:未来を見据えた提案型営業へ

歯科技工所の営業は、単に「外注をください」というアプローチから脱却し、医院の制度活用、業務改善、診療の質向上に貢献するパートナーとしての立ち位置を目指す必要があるように感じます。

  • デジタル対応と多様な技工ニーズへの対応力(CAD/CAM、義歯、訪問対応)
  • 届出情報を読み解く力(見込み層の特定)
  • 制度・加算を活用した提案力(医院メリットを可視化)

歯科技工所様向けの歯科診療所への営業/ターゲティング支援

SCUELは、施設基準に関するデータのほかに、外来患者数、院長年齢、開業年、チェアユニット数など多様なデータを保有しております。また、図のように5種のタイプのデータを活用することで、今回ご紹介した施設基準を活用したターゲティングの他に、開業前歯科医院へのアプローチや、データの変化=営業シグナルに活用できる差分データ、外来患者数や売上TOP法人へのターゲティングなども可能となります。データを活用した歯科マーケティングの基盤として SCUELデータベースをご活用に関心のある方はお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

SCUELデータサービスの概要

歯科データベース基盤の提供、顧客/競合分析による戦略強化、ターゲット医院のアプローチを支援します。