海外経歴を持つ医師の人物像に迫る

医師の専門性を捉えることができるデータは様々です。
日常的によくご相談いただくのは学会資格や専門領域ですが、近年は医師の経歴に着目する企業の方々も増えてきました。

医師の経歴に注目する理由には、次のような視点があります。

  • 海外の著名研究者・研究グループに属していた医師の特定
  • 同じ研究室に留学していた医師コミュニティの把握
  • 海外への発信力がある医師の推定
  • 次代のKey Opinion Leader(KOL)の推定 など

そこで、SCUEL医師データベースに格納されている経歴データを用いて、ある疾患領域の専門医約1万人を対象に、海外機関への留学や勤務経歴が確認できる医師を調査しました。その結果、約800人(8%)の医師に海外機関での在籍歴が確認できました

一般的には、留学や海外研究経験を持つ医師は20~30%程度とされています。SCUELは公開情報に基づくため、その一部のみが表出しますが、「どの医師が・いつ・どの海外機関に在籍していたのか」がまとめて把握できる点は、他にはない特徴です。

海外機関への在籍経験数

海外機関への在籍歴が確認できた約800人の医師を対象に、医師1人あたりの在籍機関数を集計しました。最多は10カ所でしたが、大半の医師は1カ所のみでした。

一方で、4カ所以上の海外機関に在籍していた17人の医師について見ると、以下のような特徴がありました。

  • 17人いずれも500床以上の大規模病院に所属
  • 約半数が指導医資格を保有
  • 所属施設における役職は教授・部長が最も多く9人、准教授5人、講師2人、医長1人

海外機関への在籍がまだ1か所しか確認できない医師が大半ですが、将来的に国内外の機関で診療や研究を重ね、診療分野のトップ層に立つ可能性のある医師集団であるとも考えられます。

▼留学・勤務先として多く表出する海外機関

表:10名以上の医師の在籍が確認できた海外機関

同疾患領域において、医師の留学先・勤務先となっている海外機関の数は約350機関に及びました。
表出上位はアメリカ国内の研究施設や大学であり、アメリカ国立衛生研究所、次いでハーバード大学、ピッツバーグ大学、カリフォルニア大学などが見られました。
今後は、国内の大学医局ネットワークに限らず、海外の研究機関を起点とする医師のつながりにも着目することで、医師に情報を届ける新たなチャンネルを開拓することができるかもしれません。

▼海外機関への在籍期間

在籍期間が確認できた医師では、機関あたりの平均在籍期間は約2年間でした。中には5年以上同じ海外機関に在籍していた医師もいます。
5年以上の在籍歴を持つ医師の多くは400床以上の大規模病院の勤務医でしたが、その専門性を活かし自身のクリニックを開業している医師も約25%見られました。

今回は同じ疾患領域の専門医に着目して海外経歴を調査しましたが、同領域の専門医であってもそのキャリア形成の仕方は様々であり、こうした志向の違いが、診療活動にも表れている可能性が考えられます。

海外での留学・勤務経験は、医師の人物像や診療志向を読み解くための有用な情報です。医師の専門性を深く理解するための一つの視点として、ぜひご活用をご検討ください。

▼SCUEL医師データベース:経歴データ

海外経歴データのサンプルイメージ

SCUEL医師データベースには、医師の専門性や経歴、外来診療の状況等を把握いただける様々なデータがあります。
今回ご紹介した海外経歴データの他にも、お探しのデータやご興味のあるデータがございましたら、お気軽にお問い合わせください。