2025.04.18

介護施設の食費データから「地域差・委託状況・法人別の価格傾向」を可視化

ミーカンパニー株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:前田 健太郎、以下「当社」)は、介護施設データベース「SCUEL(スクエル)」を用いて、食費に関する全国の施設情報を分析。食費設定の地域差や委託先の有無による料金差、大手法人間の価格戦略の違いなどを調査しました。

このたび、本データセットの販売開始に向けて、概要をまとめた無料ミニレポートを公開いたします。営業戦略・サービス設計・市場分析にご活用いただけます。

食費データから見える実態:分析の概要

今回のデータ分析では、食費データを開示している全国約4万件の介護施設情報を対象に、施設種別・地域別・規模別など多様な切り口から食費データを多角的に調査しました。公開情報を元にしているため、構造化されていない文章(非構造化データ)も含まれていたことから、AIを活用したデータ抽出・整形・クレンジング処理を経て分析を実施しています。

施設の運営形態や立地条件によって異なる食費設定の傾向を明らかにすることで、食事サービス提供事業者や施設運営者の意思決定に役立つ知見の提供を目指しています。

主な分析項目としては、①委託先の有無による料金差、②地域による食費の違いと朝・昼・夕の配分パターン、③定員規模による料金の違い、④介護付き有料老人ホーム運営法人の食費比較──の4点に焦点を当て、それぞれの特徴的な傾向を抽出しました。特に、介護施設の運営コストの中で重要な位置を占める食費については、事業運営の効率化や利用者満足度の向上を両立させるための戦略的な設定が求められています。

背景:食事提供方式の変化を捉える

介護業界では人材不足や食材費の高騰を背景に、食事提供方式の見直しが進行しています。特に調理人員の確保が困難となる中、委託先の変更や提供方式の転換(施設内調理から外部委託へ、あるいは従来型の委託からチルド搬入+再加熱型へ)の動きが予想されています。

こうした市場の変化を捉えるため、当社では全国の介護施設における食費データを収集・分析しました。その結果、法人別に見ると同一法人内でも委託会社がバラバラというケースが多数確認され、これは各施設の地域性に応じた最適な委託先選定や、地域ごとの食材調達ルートの違いなどが影響していると考えられます。全国展開する大手法人であっても、地域特性に合わせた運営を行う傾向が強まっており、今後の委託先再編や提供方式の変更に向けた準備が始まっていることが示唆されています。

また、食事提供に関わるコスト上昇分を料金に転嫁できるかどうかも、地域間や施設間での大きな差異を生み出す要因となっています。本データセットはこうした市場変化の基礎データとして、食事サービス提供事業者や介護施設運営者の戦略立案に活用いただけます。

食事提供方式と分析手法

介護施設における食事提供方式は、大きく以下の3つに分類されます:

  • 施設内調理型:施設内に厨房・調理員を持ち、日々食事を調理。 
  • チルド搬入+再加熱型:外部で調理された食事をチルドで搬入、施設で温めて提供。 
  • 完全外注型(配食型):出来上がった食事を個別包装で毎回配送。 

SCUELデータベースでは、施設種類ごとの食費単価に加え、調理員人数、定員数、利用者数、従業員人数、加算状況など多様なデータを保有しています。これらの情報を「SCUEL ANALYTICS」サービスで組み合わせて分析することで、各施設がどの食事提供方式を採用している可能性が高いかを推定することもできます。

 

①委託先の有無による料金差(サ高住の場合) 

SCUELのデータ分析により、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)において、食事を外部委託しているか否かで料金に顕著な差が見られることが判明しました。下図のように、多くの地域で一定のパターンが確認できます。

  • 委託先あり施設:平均月額49,000〜52,000円台の傾向。特に栃木県、静岡県、長野県など、委託先を有する施設は比較的高額な設定が多く見られます。 
  • 委託先なし施設:多くの都道府県で委託先ありの施設より3,000〜4,000円安い傾向が見られます。例えば北海道では委託先ありが49,441円なのに対し、委託先なしは44,168円と約5,300円の差があります。 
  • 委託有無による逆転現象:一部の都道府県では委託先なし施設の方が逆に高額になるケースも。例えば滋賀県では委託先なし施設が49,523円と、委託先あり施設(47,182円)より約2,300円高い結果となっています。 

地域別に見ると、同じ委託ありでも東京(52,791円)や神奈川(53,059円)といった首都圏が高い一方、東北地方では42,000〜48,000円台と比較的安価な傾向があります。

また、愛知県では委託先あり・なしの差がほとんどない(51,203円で同額)という現象も確認されました。これは地域の競争環境や食材調達条件が影響している可能性があります。

②地域による料金差と朝・昼・夕のウェイト比較(老健の場合)

介護老人保健サービスにおける朝・昼・夕の食費データを詳細に分析すると、都道府県ごとに特徴的な価格設定と配分が見られます:

  • 東京・神奈川など都市部:東京都(朝530円、昼718円、夕699円)と神奈川県(朝475円、昼716円、夕677円)では特に昼食単価が700円を超え、全国で最も高額です。朝食よりも昼食が約40%高い価格設定が特徴的です。 
  • 近畿地方の朝食低価格傾向:京都府(朝336円、昼632円、夕597円)や大阪府(朝348円、昼604円、夕593円)では朝食価格が全国最低水準である一方、昼夕は標準的な価格帯です。朝食は昼食の約半分の価格に設定されています。 
  • 兵庫・奈良の昼夕高額設定:兵庫県(朝434円、昼707円、夕708円)と奈良県(朝448円、昼707円、夕716円)では昼夕ともに700円を超え、特に夕食が高額な特徴があります。昼夕の差がほとんどないのも特徴です。 
  • 東海地方の夕食重視傾向:愛知県(朝432円、昼686円、夕734円)では夕食価格が全国トップクラスであり、昼食と比較して約50円(7%)高く設定されています。これは夕食を重視する地域の食文化を反映している可能性があります。 
  • 北陸・中国地方の均衡配分:島根県(朝399円、昼597円、夕577円)や岡山県(朝376円、昼588円、夕579円)では3食の価格差が比較的小さく、バランスの取れた配分となっています。昼夕の差が20円以内という特徴があります。 
  • 九州地方の全体的低価格:福岡県(朝407円、昼563円、夕563円)や長崎県(朝399円、昼530円、夕533円)など、全体的に他地域より約10〜15%(金額にして50〜100円)低い価格設定が特徴的です。昼夕完全同額の設定も多く見られます。

以上のデータから、介護老人保健サービスにおける食費は、都市部と地方の差だけでなく、地域ごとの食文化や運営方針を反映した多様な価格設定がなされていることがわかります。こうした詳細なデータは食事サービス提供企業の営業戦略や価格設定の重要な参考情報となります。

③定員規模による料金の違い

SCUELデータによると、施設の定員規模や介護サービスによって食費の設定に明確な傾向が見られます。下表のように、規模による段階的な変化が確認できます。

  • 小規模施設(〜19人)の月額食費:サービス付き高齢者向け住宅では平均45,140円です。この規模は小規模施設として最も一般的です。 
  • 中規模施設(20〜59人)の月額食費:規模によって料金に違いがあり、20〜39人の施設では47,787円、40〜59人の施設では49,572円と、規模が大きくなるにつれて食費も上昇する傾向があります。小規模施設と比較して約2,600〜4,400円高く設定されています。 
  • 大規模施設(60人以上)の月額食費:60〜79人規模の施設では平均50,282円とピークに達し、80人以上では若干下がる傾向が見られます。100人以上の大規模施設の平均月額食費は49,610円となっています。中規模(20〜39人)と比較すると約2,500円の差があります。

定員規模による食費の違いは、運営効率やスケールメリットの影響を受けていると考えられます。特に中規模から大規模施設では、一定の質を担保しながら効率的な食事提供が実現できる可能性があります。

※食事提供方式(施設内調理型、チルド搬入+再加熱型、配食型)については本データセットでは直接的な把握が難しいため、ミニレポートでは規模別の価格傾向に焦点を当てた分析を提供しています。

④介護付き有料老人ホーム運営法人の食費比較

介護付き有料老人ホームを運営する法人間でも、食費設定に大きな差があることが判明しました。運営法人は大きく以下の3タイプに分類できます。

  • 高額帯の運営法人:一部の法人では月額7万円を超える高単価の食事を提供しています。これらの法人は比較的少数の施設を運営し、食事の質や選択肢の多様性などで差別化を図っている可能性があります。 
  • 中間帯の主要法人:大手運営法人の多くは月額5万円前後の価格帯に集中しています。これらの法人は多数の施設を全国展開し、一定の品質基準を保ちながらスケールメリットを活かした運営を行っていると考えられます。 
  • 低価格帯の法人:3万円台の比較的低価格で食事を提供する法人も存在します。こうした法人の中には、多数の施設を運営しながらも効率的な運営体制を構築し、コストパフォーマンスの高いサービスを提供している例も見られます。 

重要な点として、食費は入居者が支払う総額の一部に過ぎず、入居一時金や月額の基本料金、介護サービス費用などと合わせて総合的に評価する必要があります。例えば食費が高額でも、入居一時金が低めに設定されていたり、その他のサービスが充実していたりする場合があります。したがって、食費単体での評価ではなく、施設の総合的な料金体系やサービス内容を踏まえた分析が重要です。

法人ごとの食費設定の違いは、それぞれの経営戦略やターゲット入居者層、立地条件などを反映していると考えられ、価格競争だけでなく、サービス差別化の視点からも興味深い示唆を与えています。

無料レポート ダウンロード

今回の分析結果の一部を無料レポートとして公開中です。以下の内容を収録しています:

  •  都道府県別の平均食費一覧(サービス別) 
  • サ高住における委託先の有無による料金差(都道府県別詳細データ) 
  • 朝・昼・夕の料金配分の地域差分析 

このミニレポートは、介護施設向け食事サービスを提供している企業(給食事業者、食材卸、宅配食事業者など)の営業戦略や新規開拓に役立つ市場情報となります。特に地域ごとの価格相場や、委託先の有無による約3,000〜5,000円の価格差は、提案価格の設定や、サービス差別化戦略を考える上での重要なデータとなるでしょう。また、地域別・規模別の傾向を把握することで、ターゲット施設の絞り込みや効率的な営業活動にも活用いただけます。

食費データセットについて

本リリースにてご紹介しているデータは、SCUELの「食費データセット(β版)」として販売しており、介護施設を運営する法人別の平均食費なども法人データと組み合わせることで集計できます。本データセットには以下情報が収録されており、企業のターゲティングや営業活動にご活用いただけます:

  • 月額食費の金額
  • 1日あたりの食費の金額(朝・昼・夕それぞれ)
  • 委託会社情報